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おすすめのエッセイ(随筆)を紹介【書き方が自由だからこそ面白い】

今回は、おすすめのエッセイ(随筆)を紹介していきます。

私はエッセイが大好きです。作家や学者や芸能人など、本職が別にある人のエッセイなんかを読むと、とても新鮮で、その人の本当のスゴさがわかったりしますよね。

「型」がなく、書き方が自由だからこそ、エッセイは面白いのです

そもそも「エッセイ」とは何か?

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「エッセイ」とは、自由な書き方で、思うままに意見などを述べた散文のことを言います

小説や論文と違い、何のルールも意識せず、ただ自由に書いた文章です。

現在の「ブログ」の文章なども、「エッセイ」に分類されるものが多いかもしれません。

エッセイの語源は、16世紀フランスの哲学者モンテーニュの主著『エセー(Essais)』です。(エセーはフランス語、エッセイは英語。)

モンテーニュが書いた文章は、人間のあらゆる営為をその筆の対象にし、しかも聖書からの引用がほとんどなかったので、当時としては"けしからん"ものだったのです。しかしそれゆえに、自由な文章の代名詞として、現在まで名前が引き継がれています。

ようは、何の決まりごともなく自由に書いたものが「エッセイ」なのです

厳密なこと言うなら、モンテーニュは「判断力の試み」という意味で「エセー」という言葉を使っていました。だから、「書いて試してみる」というニュアンスがあります

「随筆」はほとんど「エッセイ」と同じ意味

日本では、エッセイのことを「随筆」と訳すことがあります

「随筆」は中国から来た概念ですが、筆の赴くままに書く文章のことです。

多少のニュアンスの違いはあれども、現在は「エッセイ」=「随筆」と考えていいと思います

ちなみに、モンテーニュの『エセー』は、日本語では『随筆録』と訳されています。

おすすめのエッセイ(随筆)を紹介

それではさっそく、私のおすすめを紹介していきます。

  • 女性作家が書いたおすすめエッセイ
  • 男性作家が書いたおすすめエッセイ
  • 日本の三大随筆

の順番に紹介です。

面白いエッセイ(随筆)を探している方は、ぜひ参考にしていってください!


女性作家が書いたおすすめエッセイ

女性作家のおすすめエッセイです。

女性は、いわゆる「エッセイスト」と呼ばれる、エッセイを本業とする作家が多いように思います。

特に、白洲正子、須賀敦子、向田邦子などは、女性らしい知性と教養を感じさせる、本当に素晴らしい文章が多いですね。

『窓ぎわのトットちゃん』黒柳徹子

窓ぎわのトットちゃん 新組版 (講談社文庫)

窓ぎわのトットちゃん 新組版 (講談社文庫)

「徹子の部屋」の司会をつとめ、「同一司会者によるトーク番組の最多放送世界記録保持者」として世界的に有名な黒柳徹子ですが、戦後最大のベストセラーを執筆したエッセイストでもあります。

2017年には、『窓ぎわのトットちゃん』の中国での発行部数1000万部突破がニュースになりました。

日本国内では単行本と文庫本を合わせて累計800万部で、戦後最大の記録です。

当時は一大ブームになって、「タレントが執筆した本を学校の図書館に置くな!」とPTAに文句を言われたりしていた時代もあったのです。

黒柳徹子の子供の頃の自伝エッセイであり、完全にノンフィクション作品です。

黒柳徹子は、注意欠陥や多動性障害などADHDの傾向があり、通っていた小学校を退学させられ、子供の個性を尊重する「トモエ学園」に転校しました。

そして、そのトモエ学園でのユニークな日々が描かれるのですが……多くを説明する必要はないと思います。ぜひ自分の目で読んでみてください。

ちなみに、「校長先生を演じられる人はいない」という理由で、黒柳徹子自身が、ドラマ化や映像化の話をすべて断っているそうです。


『父の詫び状』向田邦子

新装版 父の詫び状 (文春文庫)

新装版 父の詫び状 (文春文庫)

向田邦子は、日本が誇るエッセイスト・小説家・脚本家です。航空機墜落事故によって惜しくも早逝された天才ですが、彼女の作品はいまだに多くの人に愛されています。

有名な芸能人で言えば、例えば太田光や星野源も、彼女のファンを公言しています。

著書の中でも特に評価が高いのは、「昭和の父親」を描いた『父の詫び状』です。

どこにでもある昭和の家庭の息遣いが、文章から伝わってきます。

日本一のエッセイの書き手と評されることも多く、短いのにちゃんとストーリーがあり、無駄な部分が一切なく簡潔で、喜怒哀楽が生き生きと伝わり、生活の温かい匂いさえ漂ってくるような文章です。

永遠に日本の歴史に刻まれるであろう、類まれなる随筆の一つです。

小説家や脚本家としても比類ない実力と才能の持ち主であった向田邦子ですが、私はエッセイが特に好きです。


『父・こんなこと』幸田文

父・こんなこと (新潮文庫)

父・こんなこと (新潮文庫)

あまりにも偉大な作家である幸田露伴を父に持つ幸田文は、幼少の頃から父に厳しくしつけられ、結婚して娘をもうけた後、離婚して再び露伴の元へ戻ってきます。

そして、父の臨終まで、できるだけ家事や介護などをしっかりこなそうとするのですが、相変わらず露伴はとても厳しい。とてもつらい日々だったようです。しかし、父の指導は娘にしっかりと受け継がれていました。

幸田文は、父を看取った後、遅咲きのデビューを果たし、全集も発売されるほどの作家になりました。

厳しさと優しさが同居する幸田文の文章は、父から受け継いだものであり、文学好きであれば知らない人はいないというほど有名なエピソードですね。

「厳しく叱る家主とそれに耐える女性」と、現代的な視点からは見えてしまいますが、よく読むほど、かつてそこにあった美しく甘やかなものが見えてきます。

幸田文のこれ以上無いほど洗練された文章を読めば、けっして父親の厳しさにケチをつける気にはなれないでしょう。


『美しいもの 白洲正子エッセイ集(美術)』白洲正子

美しいもの 白洲正子エッセイ集(美術) (角川ソフィア文庫)

美しいもの 白洲正子エッセイ集(美術) (角川ソフィア文庫)

私は、白洲正子のような女になりたいと思って生きてきました。

白洲正子は、最近になって再評価されたりしている、GHQに「従順ならざる唯一の日本人」と言われた白洲次郎の妻です。

女ながらに、青山二郎や小林秀雄など、美意識を極めようとする厄介な人たちと対等に付き合ってきました。

一流の知性と一流の美意識で、日本にある古くて美しいものを綴っていきます。

学術的な調査や解釈をあえて避け、自分の直感のみを頼りにして、潔く、美しさというものの核心を描き出していくのです。

お肌をサラサラにしたり、変なブランド品をたくさん手に入れるよりも、一冊でも白洲正子を読んだほうが、ステキな女性になれると思います。

角川ソフィア文庫で出ているエッセイ集が、初心者にも読みやすくまとまっているのでおすすめです。


『ヴェネツィアの宿』須賀敦子

ヴェネツィアの宿 (文春文庫)

ヴェネツィアの宿 (文春文庫)

イタリア文学者で、一流の随筆家でもある須賀敦子の著作です。

須賀敦子は、カトリック系の学校に通い、パリ大学に留学するも、パリの雰囲気に耐えられなくなり、次第にイタリアに傾倒していきます。

イタリア人の夫ペッピーノと結婚し、ミラノに居を構え、川端康成などの日本文学をイタリア語に翻訳しました。また、数多くの随筆を残しています。

『ヴェネツィアの宿』では、須賀敦子がこれまでの人生で出会い、そして別れてきた、
様々な人たちや、そのエピソードが、美しい筆致で綴られています。

自らの強い意思と知性を持って生きたその凛とした人生と、類まれなる文才よって結実した、珠玉の随筆集です。

逞しく力強く、それでいて常に優しい風が吹き抜けているような、須賀敦子だからこそ書ける名文の数々です。


『料理歳時記』辰巳浜子

料理歳時記 (中公文庫)

料理歳時記 (中公文庫)

四季折々の料理の作り方や素材、今はもう忘れられようとしている食べ物の知恵が書かれた、料理エッセイです。

料理本という枠を超えて、純粋に、文章が限りなく端正で美しいです。

著者の辰巳浜子は1904年生まれで、今で言う料理研究家の草分け的存在なのですが、本人は「料理研究家」と言われることを嫌い、あくまで「主婦」であることにこだわりました。

もともとごく普通の主婦なので、料理も独学だったのですが、家に招いた客をもてなすための料理が評判となり、雑誌やテレビに呼ばれるようになりました。

日本の家庭料理の真髄が詰め込まれた本で、四季を味わい、旬を大切にし、その料理を実際に作るわけではなくとも、読んでいるだけで「日本に生まれてよかった!」と思えるような名文です。

長年愛され続けているのも納得してしまいます。有象無象の料理本や食事本に手を出すよりも、まずはこれを読んでみてください。


『女子をこじらせて』雨宮まみ

女子をこじらせて

女子をこじらせて

自ら「AVライター」を名乗り、多くの女性にとってカリスマ的存在だった、雨宮まみ氏の自伝的エッセイです。

話題性とポジショニングとあざとさだけの、昨今のしょうもない女子ライター達と比べ、雨宮まみさんは本物でした。

「女としての生きづらさ」を、あけすけなく、明るく、インパクトとユーモアたっぷりに、真剣に語っています。

「こじらせ」という言葉が相応しい自らの性的な体験なども、包み隠さず、作品の糧にしています。

私小説のような読み心地で、刺さる人にはものすごく刺さる文章が多いです。

これほど聡明な女性が、ここまで語ってくれたという事実に、多くの女性が励まされたのではないでしょうか?


『すばらしい日々』よしもとばなな

すばらしい日々 (幻冬舎文庫)

すばらしい日々 (幻冬舎文庫)

よしもとばななは、戦後最大の思想家と言われた吉本隆明の娘であり、世界的にも評価されている作家です。

小説のみならず、数々のエッセイ集を出版しています。

ただ、彼女のエッセイが一度インターネットで大炎上したことがありましたよね。

持ち込み禁止なのにワイングラスを勝手に持ち込み、バレて店長に怒られ、その店長を厳しく批判したという内容でした。

「私が人脈持ってる人間だとわかれば大勢の客を失うこともなかったのに」的な、「元スーパーIT高校生Tehu君」みたいなことを書いてしまい、ネット民から袋叩きされました。

該当のエッセイは『人生の旅をゆく』という文庫に収められていますが、私がおすすめしたいのは『すばらしい日々』という最近書かれたものです。

震災の後、父と母を相継いで看取り、どん底の状態の中で、それでもなお喜びを見出そうとする、よしもとばななにしか書けない希望の本です。

いけ好かない炎上おばさんだからと毛嫌いせずに、ぜひ手にとってみてください。



男性作家が書いたおすすめエッセイ

男性作家は、本業のついでにちょちょいと書いたエッセイが、とても面白い印象があります。

好きな作家や学者のエッセイを読んでみると、より親しみのある側面が発見できて、幸福な読書体験を味わえると思います。

『われ笑う、ゆえにわれあり』土屋賢二

われ笑う、ゆえにわれあり (文春文庫)

われ笑う、ゆえにわれあり (文春文庫)

ギリシャ哲学と分析哲学が専門の大学教授、土屋賢二のエッセイです。

本書は、哲学者なのにユーモアの才能がある土屋賢二による初のエッセイなのですが、あまりの面白さに、エッセイとしては異例のロングセラーとなっています。

禁煙、男女関係、楽しく生きる方法など、テーマのバリエーションは多岐にわたり、テツガク的なバックグラウンドを元に、抱腹絶倒のエッセイが展開されます。

屁理屈、詭弁、真面目な考察、センス溢れるユーモアを自由自在に駆使し、常人では絶対に書けないツチヤワールドが広がります。

哲学者らしく、それでいて哲学者とは思えない、これまで読んだことがなかったような絶品のエッセイ集です。

私がエッセイの面白さに目覚めた一冊なので、ぜひおすすめしたいです。


『村上朝日堂』村上春樹

村上朝日堂 (新潮文庫)

村上朝日堂 (新潮文庫)

村上春樹は、もはや言わずと知れた日本を代表する作家ですが、エッセイを読めば彼のスゴさがよくわかると思います。

「村上春樹の小説は好きじゃないけどエッセイは大好き!」「ハルキの本当のすごさはエッセイを読めばわかる!」という読者もいますね。

思うままに書かれていますが、とっても「村上春樹らしさ」のあるエッセイだと思います。

『村上朝日堂』は、村上春樹初のエッセイ集で、デビューして間もない30代の頃の文章です。

『村上朝日堂の逆襲』や『村上朝日堂はいほー!』など、続編もたくさんあります。

肩肘の張っていない、とても気軽な雑文集で、すべて見開き2ページで読み切れるように書かれているので、どのページから読んでもOKです。

そして、今は亡くなられてしまった安西水丸先生が挿絵を描いています。

安西先生の描く村上春樹って、とってもラフに書かれているんだけど、「村上春樹」って顔をしてるんですよね。

読み終えると、村上春樹氏のオシャレな雰囲気とは言えない顔が、とても愛嬌のあるステキなフェイスに見えてくることでしょう。

村上春樹は、『村上ラジオ』や『雑文集』などなど、エッセイや紀行文をけっこうたくさん書いているのですが、一番最初に書かれたみずみずしい作品なので、まずは『村上朝日堂』をおすすめします。


『さいえんす?』東野圭吾

さいえんす? (角川文庫)

さいえんす? (角川文庫)

『ガリレオシリーズ』や『白夜行』などの著者であり、大人気ミステリー作家である東野圭吾も、今まで5冊ほどエッセイを出版しています。

理系のミステリー作家ならではの、理知的なエッセイです。

作家になる前まではエンジニアをしていたんですね。

科学捜査の話や数学の重要性など、理科系の人らしい説得力があって、読んでいて膝を打ちます。

踏み込む領域は多種多様で、恋愛からダイエットからプロ野球から血液型占いまで。

天才ミステリー作家のラフな一面が垣間見えるすてきなエッセイ集です。


『時をかけるゆとり』朝井リョウ

時をかけるゆとり (文春文庫)

時をかけるゆとり (文春文庫)

最年少で直木賞を受賞した、若き人気作家が綴る、20代男子のエッセイです。

世代を代表する小説家が、等身大の若者の人生を綴っています。

人気作家だけあり、ユーモアのセンスもさすがです。

男子学生のような勢いがあり、下ネタはけっこう多め、勢いよく笑わせてくれる、バカバカしくて気持ちのよい作品です。

著者は、文章を書く内省的な才能がありながら、リア充・パリピ的な領域に入っていけないこともない、恵まれた能力の持ち主なのでしょう。


『中島らもエッセイ・これくしょん』中島らも

中島らもエッセイ・コレクション (ちくま文庫)

中島らもエッセイ・コレクション (ちくま文庫)

小説家であり、劇作家であり、ミュージシャンであり、コピーライターであり、ラジオパーソナリティや放送作家でもあった、多彩な天才である中島らものエッセイです。

ちくま文庫から、ベスト版のような形でエッセイ集が発売されています。まだ中島らものエッセイを読んだことがないという方は、こちらをおすすめしたいです。

まさに天才といったお手並みです。

縦横無尽で、人生の含蓄を振りまいていくような筆致。

いまだに追悼ライブが行われ、数多くの熱狂的なファンをかかえている中島らも氏の文章に、ぜひ触れてみてください。


『オンリー・ミー―私だけを』三谷幸喜

オンリー・ミー―私だけを (幻冬舎文庫)

オンリー・ミー―私だけを (幻冬舎文庫)

テレビドラマ『古畑任三郎』や『王様のレストラン』、映画『ステキな金縛り』や『清州会議』、舞台『オケピ!』などなど、日本を代表する脚本家・演出家・映画監督である、三谷幸喜のエッセイです。

「1ページで1回笑えます!」と宣伝する胆力は流石のものだと思います。

三谷幸喜の人間としての面白さがベースにあるからこそ、あのような大勢の人を笑わせられる台本がかけるのだと納得してしまいました。

あと、話のまとめ方とか、起承転結の作り方とかが、ものすごく上手いですね。

初エッセイにしてこれほどのレベル。やっぱり天才には敵いません。


『食通知つたかぶり』丸谷才一

食通知つたかぶり (中公文庫)

食通知つたかぶり (中公文庫)

圧倒的な知性・教養・胆力で、「文壇のドン」と呼ばれていた丸谷才一。

小説、随筆、書評、翻訳、どれも一流で、ただ偉いだけではない本物でした。

丸谷才一の著書の中でも、特に私が好きなのがこの『食通知ったかぶり』です。

今で言う食べ歩きグルメエッセイのようなものですが、「本当に教養のある人はこのようなことを考えるのか」と、度肝を抜かれるような思いをしました。

文学が全盛だった時代を知っている作家の、筆力の確かさを感じる随筆です。

とは言え、重々しさはなく、とても気軽に読めるので、ぜひ手にとってみてください。


『小生物語』乙一

小生物語 (幻冬舎文庫)

小生物語 (幻冬舎文庫)

『夏と花火と私の死体』で鮮烈なデビューを果たした、超人気ミステリー作家「乙一」の、何気ない出来事を綴った日記風エッセイです。

ホームページに書いていた日記を書籍化したものになります。

私小説風の日記なのですが、乙一氏らしく、どこかでフィクションが混じっています。

とは言え、ドキドキハラハラの小説というよりは、特に何も考えずに読める軽い日記エッセイです。あるいは、ネタ帳のような、日記と創作の狭間のような文章と言えるかもしれません。

氏にしか書けないようなユニークさがあり、アイディアがポンポン湧き上がってくるのを間近で見ているような、不思議な面白さがあります。


『葉隠入門』三島由紀夫

葉隠入門 (新潮文庫)

葉隠入門 (新潮文庫)

『葉隠』とは、江戸時代中期に書かれた、武士としての心得がまとめられたものです。

「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」という有名な文言も本書の中にあります。

ちなみに、新渡戸稲造の『武士道』は、実は外国の人たち向けに書かれた本であって、日本人向けの武士道の書は『葉隠』でしょう。

三島由紀夫はこの『葉隠』に大きな影響を受けていて、『葉隠入門』というエッセイ風の読み物も書いています。

三島は、1970年に切腹で無くなっていますが、戦後の平和な時代を四半世紀も生きてなお、自ら「切腹」という死に方を選ぶのは相当の覚悟や意思の強さがなければできないことです。

本書では、平和で、欲望に忠実で、合理的になってしまった世の中に疑問を投げかけられています。40年以上前に書かれた本ですが、三島が批判した状況は、今においてますます酷くなっています。

男性的で力強く、それでいてこれ以上無いくらいに知的で、激辛料理のようにスパイスの効いた文章です。私は女なので「ちょっとついていけませんわ……」といった部分も多いのですが、こういう文章を「美味しい」と感じる気分のときって、たしかにあるんですよね。

「とにかく命が大事!」という盲目的な価値観は、逆に「生きる」ということの価値を萎ませてしまっているという指摘は、本書を読めば納得感があります。

「どう死ぬべきか」を意識することによって、より良い生き方への道がひらけるのです。



日本の三大随筆

せっかくなので、「日本の三大随筆」と呼ばれている、『枕草子』、『方丈記』、『徒然草』も紹介します。

エッセイ好きなら読まない手はないと思います。

グーグルで検索すれば無料で読める全文が簡単に見つかるので、ぜひ今一度読み返してみてください。やはりどれも「三大随筆」と言われるだけのことはあります!

ちゃんとした訳文や解説が欲しいのであれば、出版されているものを買ってみるもの手です。どれも安いし、買う価値は十分にあるでしょう。

『枕草子』清少納言

枕草子 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

枕草子 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

日本を代表する古典エッセイ(随筆集)です。

「これを読まないで他の何を読むの!?」というレベルの、時代を超えた名作です。

「国語の時間に無理やり暗記させられた」とよくない印象を持っている人も多いでしょうが、いろんな経験や知識を得てから読み返すと、全然違ったものが見えてきます。

自分が日々感じる美意識と、清少納言の美意識を照らし合わせる形で読んでみるのがいいと思います。

千年の時を経ても通じるものがある、それもほんのちょっとした風情だったり好き嫌いだったりが……という感動が読み返すたびにありますね。

有名な冒頭だけでなく、その後も抜群に面白いのでぜひ読んで下さい。

清少納言が本当にすごいのは、悪いものには悪いってちゃんと言うんですよね。

それだけ自分の美意識に自信があるということなのでしょうけど、当時としても、現在の基準でも、自分が悪いと思うものにちゃんと「悪い」と言えるのはすごいことなのだと、枕草子を読むたびに感じます。


『方丈記』鴨長明

方丈記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

方丈記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。」の書き出しで始まる、鎌倉時代に鴨長明によって書かれた随筆です。

社会の激動期、鴨長明は草庵に遁世して、これを書きました。

「無常」という言葉は実は本文には一度も出てこないのですが、人の世の儚さを謳い上げる内容になっています。

死体の匂いが、手を血に染めることが、ごく当たり前だった時代の空気が漂ってきます。

人間の儚く滑稽な生き方が綴られていて、読めば不思議と勇気が湧いてくるのです。


『徒然草』吉田兼好

新版 徒然草 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

新版 徒然草 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

鎌倉末期に、兼好法師によって書かれた随筆です。

徒然(やることがことがなく、手持ち無沙汰)なままに、筆を走らせて書かれたものなのですが、様々な訓戒に富んでいます。

知的で教訓のあるエッセイみたいな感じですね。

中学・高校の教科書によく採用されるように、しっかりと「オチ」のある話が多いので、読んでいてわかりすいと思います。

現在から読んでも明快な文章で書かれているのですが、例えば小林秀雄なんかは、徒然草を「鈍刀を使って彫られた名作」と評価していますね。

あまりにたくさんのことを知っているし感じているのだけれど、それを素朴な文章にまとめてしまう、その奥ゆかしさこそが徒然草の魅力だそうです。



以上になります。

長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました。

エッセイ・随筆好きの人にちょっとでも響くものがあったなら幸いです。

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